ELS 一覧

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2001年の5月から2003年の5月まで、丸々2年間、当時現役の留学生だったトシエさんが MIYACO に寄せて下さった日記です。当時から大分月日が経ちましたので、現在のアメリカ留学・生活事情にそぐわない箇所もありますが、当時の貴重な記録として、また、ひとつの読み物としてお楽しみ下さい。 【目次はこちらです】

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アーミッシュ村

#48. (2002年5月17日)

今月は書きますよ。なんせ暇ですから。

今朝、ルームメイトのご両親はテキサス州のサンアントニオの知り合いのところへ向かって出発されました。夕べのうちに「お別れ」の挨拶をしたのですが、「娘の卒業をとても誇りに思う。彼女の名前が呼ばれたとき(間違った名前でしたが)、思わず涙が出てきたわ」とお母さんはおっしゃてました。お父さんは、「もう寝巻きを着てしまったから挨拶するには失礼」と、部屋の外には出てこられませんでしたが、「新婚旅行には台湾へ来るって約束よぉ」と部屋の中から念を押されました。

アーミッシュ

で、水曜日には車で1時間半ほどのところにある「アーミッシュ・カントリー」へ一緒に行かないかと誘われました。私はまだ行ったことがなかったので喜んでお供しました。ルームメイトは去年台湾から友達が来たときに一緒に行ったようです。

さて、「アーミッシュ」って何でしょう? これはキリスト教の一派なのですが、 主にペンシルベニア州を拠点として生活している人々のことです。オハイオ州にもたくさんその集落(?)があり、私たちが出かけたところのように観光化されているところもあります。アーミッシュの人々は決して電気機械で動くものを使用しません。うそだと思うでしょ、この時代に。うそではありません。彼らはテレビも電話も車も持ってません。電子レンジもでしょうねぇ。移動手段は「バギー」と呼ばれる一頭立ての馬車か、自転車か、徒歩です。だから普通の自動車道路を平気で馬車が走ってるのです。彼らの服装も特殊です。なんか学校の制服みたいにみんな同じ格好なのです。男性は黒のつば付き帽に黒のサスペンダー付きズボン。そして決してひげを剃りません。女性は白っぽいボネットと呼ばれる帽子をかぶり、簡素なデザインのブラウス、それとこれまたつりつきの長いグレーか青っぽいスカートをはいています。これは老若問わずみなさん同じ格好。

昔聞いた話では家に鏡も置いてないとか。鏡を見れば人間誰でも着飾りたくなるからです。そりゃ、ひげも剃れないですね。

彼らは「シンプル」な生活を目指してるのです。聖書がシンプルな生活と、教会と世界とのはっきりした分離を説いていると信じているからです。つまり自分たちの教会は他の世界とは違うのだと。これは125年も続いてることで、この21世紀のテクノロジーの時代に信じられないです。これは、彼らが自動車自身が邪悪なものであると考えてるのではなく、車のある生活は家族のつながりを破壊してしまいがちだと信じているからです。

私達はその「カントリー」と呼ばれる場所の大通り両横のいろいろなお店をうろうろしました。アーミッシュの人たちは家具や手作りジャム、ろうそく、そのほか色々の食品なんかを作って売ってます。観光化されて自分たちが「みせもの」みたいになるのはいやで、村を出ていった人もいるようですが、そうやって「事業」を行っている人もたちも大勢いるわけです。

しかし、みやげ物やで売られているものが全てアーミッシュの人たちの手で作られているわけではなく、私達は多くの "Made in China" を発見しました。ちょっとがっくりです。店に入るといかにもアーミッシュの格好をした「店員さん」がいますが、彼らアーミッシュではないでしょう。私が買物をした店なんかコンピューター使ってましたから。あんまりおとぎの国に来たような気分でいると現実をつきつけられます。

ある店でオハイオメープルシロップを見つけて、「これも Made in China やったりして…」とびんの底をひっくり返して冗談を言ってると、そばで1人のご婦人が大笑いしてました。彼女はどうやらツアーバスで来た観光客でした(ってここへ来る人はみんな観光客でしょうが…)。それで私たちのところへ近づいてきて小声で「ガイドさんが言ってたけどね、China の ものばっかりなんだって。アーミッシュが作ってるわけじゃないのよぉ」と。観光客も割りきって観光を楽しんでるわけです。

近くのスーパーへ寄ってみることにしました。表に「自動車」の駐車場もありますが、 横手は「馬車」の駐車場です。スーパーはごく普通のスーパーでしたが、入ってすぐ のところに服地屋さんがあり、数人のアーミッシュの女性が世間話をしたり、買物をしていました。しかし、置かれている服地の色はアーミッシュの色、つまり水色や薄い紫色、決して柄物はありません。見ててもつまんないです。デザインも同じものだし。それと彼らはボタンも使わないのかな、と思いました。1人の女性のブラウスは前の部分が糸でただ縫い合わされているだけでした。

その店に14~15歳といった感じの女の子がいました。その子を見て思ったのですが、いくら家族の宗教、しきたり、文化かもしれないけれど、少なくとも人間なんだから、きれいな色のミニスカートはいてみたいなーとか、T シャツって楽そうとか思わないんでしょうかねぇ。真夏にあの格好は結構辛いと思います。彼らのことを不幸だとは思いませんが、そういう反発する気持ちって生まれないんでしょうか? すっごく興味があります。

このスーパーに入るときに車に乗ったアーミッシュの家族「らしき」人たちを見ました。「あ、車乗ってる!」と私達は騒ぎました。それに帰路でもアーミッシュ「らしき」服を着てるのに家に何台も車を持ってる人も見ました。例の服地屋さんの店員も電話でしゃべってましたし…。だから私は、アーミッシュにもやっぱり文明の波が押し寄せていて、今では「えせアーミッシュ」もいるのだな、と思いました。

ところがこのことをボーイフレンドに言うと、「その人たちはアーミッシュじゃないの。アーミッシュは絶対電気を使わないの。似てる人たちだけどアーミッシュじゃない」 ということです。彼は「キリシタン」なので、こちらの宗教については彼の意見に賛成することにしました。

なんかややこしい。そういう説明書きは村にはなかったですよ。「ここが違う!」とかいう看板かなんか作って欲しいです。「似てるけど違う! ワライキノコとふつうのキノコ」みたいにね。私はろうそくをいくつか買いまし た。明らかに手作りとわかるろうそくではなく、量産してそうな、しかも割安のほうを選びました。これが現実です。でも今度行ったら、あのごつごつした手作りろうそくを買おうかな、と思ってます。 【第49話へ】

カリフォルニアミラマー大学

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